IWCアンカレッジ会議 現地レポート・ブログ

IWCアンカレッジ会議を終えて

水産庁 森下丈二 漁業交渉官からのメッセージ

会議を終えたばかりの水産庁 森下丈二 漁業交渉官より,鯨ポータル・サイト読者のみなさんに向けたメッセージを受け取りましたので,ここに紹介致します(鯨ポータル・サイト編集室)。



「モラトリアム」の根本を問うアンカレッジ会議

今回のIWCで,我々にとって一番大きな問題だったのは,「沿岸小型捕鯨」です。具体的に言うと,議題「9. 社会経済的影響及び小型捕鯨」で,沿岸小型捕鯨の捕獲対象種にミンククジラを加える提案を行ないました。

これは,今までで一番いい提案を作ってきたつもりでした。モラトリアム(商業捕鯨一時停止)から20年間,捕鯨を営んできた地域がつらい思いをしてきたのですが,それを認めることができないIWCに,忍耐強い日本人もそろそろ我慢できなくなってきたのです。

今回のIWCでは,いつもに比べてかなり基本的な質問をしました。たとえば,「商業性の何が悪いのでしょう」「日本の沿岸小型捕鯨も,アラスカの人たちと非常に似た捕鯨。我々は認められず,アラスカなどは認められるのはなぜですか」という感じです。どれも,資源に悪影響を与えない持続的利用の元,主張していることです。

しかし,この答がほとんど返ってきません。「モラトリアムがあるからだめなのだ!」といういつもの論調なのです。

たとえると,ノアの箱船が実在したかを議論するとき,歴史学者の「なかった」という検証を,「聖書に書いてあるから存在するのだ!」と反論するようなものです。その反論者は,「聖書が正しいか」という議論はまったくしません。

我々はIWCで,商業捕鯨や沿岸小型捕鯨を再開するべく議論しているのですが,相手の否定の理由になっている根本に「モラトリアム」があります。ただ,「モラトリアムは正しいか」という議論をしていない。そこをはっきりさせよう,つぶそう,ということで,基本的な質問をしたわけです。ところが,それすら答えは返ってきません。そうやって相手が逃げている限りは,IWCは一歩も前に進まないのです。

そして,ある意味最後通知を突きつけたのが,今回の沿岸小型捕鯨の提案です。積極的に議論したし,けんか腰ではなく,論理通りに,誰にでもわかるように話をして,非常にわかりやすく質問したのですが,それでも答が返ってきません。最大限の誠意を払っても,答が返ってこないのです。

このままでは,いつまで経ってもIWCは変わりません。


最終日の決意表明

そこで決断しました。今日インターネットライブ中継を見てくれた方はわかると思うのですが,会議の場で,水産庁から正式に意思表示したわけです。

同じことを,記者会見でも話しています。
[記者会見映像]

ここで語られている,「IWC脱退」「新しい鯨資源管理国際機関」「沿岸小型捕鯨の自主再開」を,真剣に考えるということを,明確に発言したわけです。

2年後のIWCの会場立候補として予定していた横浜に降りてもらったことも,今回の我々の態度の,真剣さを示し,重みを持って受け止められたはずです。今日の意思表示は,我々にとってのこれからの仕事ですし,新たな方向について「やっと」動きだしたのだと思います。


5年後,10年後,鯨はどうなっている?


記者:5年後,10年後,鯨を取り巻く環境はどうなっているでしょう?


僕は水産庁を辞めているだろうね(笑)。

それはともかく,基本的なビジョンは「漁業も捕鯨も同等のものとして扱う」という仕組みが広がることだと思います。日本の周りには,すごく豊かな海がありますね。そんな海で,鯨だけはだめ,というのはおかしいですよね。

個人的な意見ですが,鯨を捕ることというのは,環境問題・食料安全保障などにも関わる,基本の一つだと思うのです。沿岸小型捕鯨などは,地産地消のきわめて代表的例ですよね。その土地で,たくさんの肉を,無駄なエネルギーを使わずに捕れる。海外から食料を輸入するより,エネルギー効率が非常に高いはずです。

「食育,食料自給率にいかに貢献できるか」。それが,鯨を取り巻く環境の最終ゴールだと思います。話が大きくなりますが(笑)。




IWC最終日を終えたばかりの森下 交渉官ですが,その目はさらに先を見つめているようです。これからの活躍,応援しています!

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